オリックスが「球界初」の攻めた姿勢。なぜ「素人」メンタルコーチを導入?
特集『セ・パの実力格差を多角的に考える』
第13回 オリックス飛躍への次なる一手
2010年代に入ってセ・パの格差が広がったと指摘されるなか、"実力のパ"で低迷しているのがオリックスだ。
過去2年連続でパ・リーグ最下位。この10年間を振り返っても、森脇浩司監督時代の2014年に2位に1度入っただけで、最下位が4度、5位が2度、4位が3度と、Bクラスの常連だ。優勝となると、仰木彬監督時代の1996年までさかのぼる。
育成から一軍に上がって結果を残した漆原大晟 常勝ソフトバンクに牽引されるパ・リーグは、強打の西武、育成の日本ハム、組織改革を施して昨季2位に入ったロッテ、そして推定年俸9億円で田中将大を獲得した楽天と、どの球団も独自色が濃い。
そんななかで存在感の薄いオリックスはなんとか低迷を脱しようと、近年、さまざまな手を打っている。
たとえば2017年には、大阪府・舞洲に約30億円をかけて球場や室内練習場、最新鋭の機器がそろったトレーニング室などを新設した。また、2010年代中盤までのドラフトでは即戦力の指名が多かったが、ここ数年はポテンシャルの高い高校生中心に切り替えており、明日の主力を自前で育てようという気概がうかがえる。
2019年オフにはT−岡田ら3選手を中南米プエルトリコのウインターリーグに派遣し、そのひとりである育成出身の右腕投手・漆原大晟は昨季22試合登板と飛躍のきっかけを掴んだ。
中嶋聡監督が代行から昇格して臨む今季は、コーチの一軍と二軍の担当制を撤廃し、全員で"ひとつ"のチームを見ている。そして興味深い取り組みが、メンタルコーチの導入だ。
「素人にやらせるのは、球界初でしょうね」
57歳で新たな任を授かった酒井勉コーチは、そう言うと笑みをこぼした。
メジャーリーグでは10年ほど前から、「メンタルスキルコーチ」の採用が各球団で広がっている。流行中のマインドフルネス(心を今に向けた状態)や、目標設定などを選手と一緒に行なっていく役割だ。メジャー、マイナー球団ともに置かれ、とりわけコロナ禍で心が不安定になりやすい現在、存在感を高めているという。
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