2021.02.26

「うまくパフォーマンスが出せない」
不安な松井裕樹に田中将大が授けた金言

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 2013年11月3日。最終局面を迎えたKスタ宮城(現・楽天生命パーク宮城)の中心で、田中将大が仁王立ちしていた。

 前日の日本シリーズ第6戦で160球を投げ完投していたチームの絶対エースは、巨人相手に3-0とリードした9回、守護神としてマウンドに上がり、咆哮を上げる。最後の打者を空振り三振に打ち取り、楽天が球団初の日本一を決めた瞬間、田中は両腕を天に突き上げた。

 今季、楽天の守護神に任命されている松井裕樹は、この瞬間をテレビで観ていた。

今シーズン、再び守護神としてスタートを切る楽天・松井裕樹 この年のドラフト会議で「注目度ナンバーワン」と呼ばれ、5球団による競合の末、楽天への入団が決まっていた左腕が、当時の情景を簡潔に呼び覚ます。

「『もしかしたら投げるのかな?』って、みんなが思っているなかで投げたことに驚きましたね。田中さんを迎える時の球場のファンの方の声援が印象に残っています」

 その田中が、今季、楽天に復帰した。

 春季キャンプ第2クール初日の2月6日に合流した直後こそ不思議な感覚だったが、すぐに喜びがこみ上げてきた。

「ユニフォーム姿を見たら『チームメイトになったんだな』って思いましたね。一緒のチームになるのは初めてで本当に嬉しく思いますし、楽しみしかないです」

 2015年から7年間、田中が主宰する自主トレメンバーの一員だ。「超一流なのに毎年モデルチェンジに余念がない」と舌を巻くように、意識の高さはわかっていた。生きた教材である田中が、より身近な存在となった。そのことで、松井の「楽しみ」へのイメージがさらに鮮明になっていった。

 松井は例年、2月はブルペンや実戦で投球フォームを固める作業に集中する。今年、心がけているのは、出力のロスを減らすため上半身の動きをシャープにすることだ。

 ブルペンで1球、1球、自分の体と対話するように丁寧に投げ込む。投球メカニズムを構築していくため、日々、意識するポイントなどテーマを設けているが、時には感覚にズレが生じることも当然ある。