2021.02.06

中日優勝のキーマンは柳裕也か。
必殺カーブに打者が翻弄される理由

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

「エースピッチャー」という表現ができなくなった時期があった。今から7、8年くらい前だっただろうか。中継ぎ、抑えとリリーフ陣の整備が進み、先発投手は6、7回をメドに降板することが日常的となると、「中継ぎエース」「抑えの切り札」のほうがクローズアップされ、本来、チームの大黒柱であるはずの「エース」の存在が希薄になってしまう。

 だが今、再び「エース」という存在が明確になりつつある。

 昨シーズン、中日は60勝55敗5分(勝率.522)という成績を残し、8年ぶりのAクラス(3位)に入った。その立役者となったのが大野雄大だ。

 大野は先発ローテーションの軸として、11勝6敗、防御率1.82。打高投低の昨今、1点台の防御率は見事なものだが、それ以上に驚かされたのが6完封(10完投)だ。「先発したら最後まで投げ切る」を実践し、しかも相手に点を与えないという圧巻のピッチング。まさしくエースの投球で、チームを鼓舞した。

 そんな大野とともに「右のエース」という立ち位置が見え始めているのが、大卒5年目の柳裕也だ。

 一昨年はシーズン前半で9勝をマークし、オールスターにも選出。結局、後半失速して11勝に終わったが、それでも投手にとってのひとつの目標である2ケタ勝利を達成し、一流の仲間入りを果たした。

 昨シーズンの勝利数は「6」止まりだったが、先発すれば試合をつくり、終盤にリリーフ陣へとつなぐ安定したピッチングを披露した。

 安定感──それが柳の投球を表現するのに、最もふさわしい言葉だと思う。ピッチングに派手さはないが、多彩な持ち球をフル稼働してアウトを重ねていく。いつマウンドに上がっても想定内の結果にまとめて、何事もなかったような顔で引き上げてくる。

 柳のピッチングでとくに印象に残っているのが、明治大4年のシーズンだった。

 春のリーグ戦は6勝1敗、防御率0.87という驚異的な成績でリーグ戦を制し、最優秀防御率のタイトルを獲得し、MVPにも輝いた。夏の日米学生野球では、8連続三振を含む7回12奪三振の快投を見せた。