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田中将大を「知らない」パの強打者たち。
新たな名勝負は生まれるか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 田中が楽天の日本一に大きく貢献した2013年よりあと、7回中6回の日本シリーズを制したのはソフトバンクである。

 もはや球界の顔となった柳田悠岐は田中との対戦経験があるものの、当時とは立場がまるで違う。2013年シーズン途中、故障が癒えてから本格的にレギュラーに定着しており、この年に104試合337打席に立った。同年限りでアメリカに渡った男と、同年からスターへの階段を上がった男。そんなふたりは1988年生まれの同学年である。

 高校2年夏に甲子園優勝投手。翌夏には伝説的な甲子園決勝を戦い、高卒1年目から活躍した田中。片や高校時代は無名で有名大学のセレクションにも落ち、地方大学からのし上がった柳田。両者の対照的な歩みも対決への興味をかき立てる。

 田中の楽天移籍が決まる前、メディアから田中との対戦が楽しみかと問われた柳田は「イヤです」と弱音ともとれるコメントを残したという。だが、2013年の田中との対戦成績は6打数3安打、打率5割と好結果を残している。

 また、田中は1月30日の楽天復帰会見で、対柳田の被打率5割の過去を認識していることを明かした。ともに球界を代表する存在として相対する今季、どんな結果が待ち受けているだろうか。

 成長途上の有望株が田中に挑む戦いにもロマンがある。ロッテには主軸としての試用期間中の安田尚憲や藤原恭大という逸材がおり、日本ハムには清宮幸太郎と野村佑希という左右のスラッガーの卵が腕を磨く。

 予定どおりセ・パ交流戦が開催されれば、セ・リーグの強打者との対戦も見応えがありそうだ。

 2013年時点でブレーク前だった鈴木誠也(広島)、山田哲人(ヤクルト)、高橋周平(中日)は、公式戦での田中との対戦経験がない。ほかにも2014年以降の入団だった岡本和真(巨人)、大山悠輔(阪神)、佐野恵太(DeNA)、村上宗隆(ヤクルト)らも「田中を知らない強打者たち」である。

 いずれにしても2021年が終わった段階で、田中に「NPBの強打者も手ごわかった」と思わせるような名勝負が繰り広げられることを期待したい。強打者たちの顔ぶれとポテンシャルを考えれば、それはきっと贅沢な要求ではないはずだ。

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