元楽天監督・平石洋介がソフトバンク
コーチになって見た常勝の「土壌」 (4ページ目)
ソフトバンクは昨季、レギュラーシーズンで100通り以上の打線を組んだ。多くは工藤公康監督が決めたというが、それも森浩之ヘッドコーチ、立花義家打撃コーチの4人でミーティングを重ねたうえでの決定である。
平石も「ここは」と感じれば、積極的に自らの考えを主張した。そういった背景があるからこそ、栗原にせよ、1番や2番、5"Ôといったように打順が変わろうとも、大きくコンディションを崩すことなくパフォーマンスを発揮できたわけである。
工藤は一部で「独裁的」と表現されることもある監督だ。しかし、実際のところは、他者の意見を制圧してまで自らのやり方を強引に進めるような人間ではない。
「独裁......。良くも悪くも、監督ってそういうもんじゃないですかね......」
平石が言葉を選びながら慮る。
「オーダーを決めるにしても、工藤監督はコーチの話を聞いてくれましたしね。そこで意見が割れて、監督が自分の考えを通したそうだったら、僕が絶対に折れました。だって、監督なんで。僕が監督をやっていた時も、コーチの意見を尊重したことで『自分が思ったとおりにやっておけばよかった』と後悔することがありました。最終的に決定して、責任を負わなければいけないのは監督です。後悔だけはしてもらいたくないですからね」
一軍監督を経験したからこそ、平石は潜在的に工藤とつながることができ、臆することなく意見交換を繰り返すことができた。
それは、ひいてはソフトバンク全体として、後悔を削減したり、事前に回避する作業でもあるのではないだろうか。
今年、オプションとして栗原にサードを守らせるプランを進めるのも、そのひとつだ。
「ベテランであっても、やれるのであれば当然、試合に出るべき」との考えを持つ平石からすれば、現時点でサードのレギュラーは松田であることに変わりはない。だが、故障などの不測の事態や数年後を見越した際に、バックアップは不可欠となる。守るポジションは増えるが、平石は栗原に適性があると見定め、昨年から練習をさせているという。
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