大打者・落合博満の攻略方法。八重樫幸雄「荒れ球投手が苦手だった」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

「オープン球話」連載第46回

【落合博満に対する攻め方のポイント】

――前回までは八重樫さんが現役時代の広島東洋カープについて聞きました。今回からは中日ドラゴンズのことを聞かせてください。対戦してきた思い出深い選手として、落合博満さんについて伺います。落合さんが大型トレードで中日入りしたのは1987(昭和62)年のことでしたが、パ・リーグ時代の落合さんには、どんな印象を持っていましたか?

八重樫 もちろん、「三冠王を獲ったすごいバッターだ」ということは知っていたけど、当時はまだ交流戦もなかったでしょう。だから、あまり強い印象はないんですよ。オープン戦やオールスターゲームで対戦したことはありました。ただ、これは僕の勝手な印象でしかないんだけど、おそらく彼はそういう場では本気で打席に立たない。たまにパ・リーグ中継でロッテ戦を見たけど、気合の入り方が全然違うんだよね。オープン戦は調整、オールスターは遊び、といった感じ。だから本来の実力を感じたのは、中日に移籍して対戦するようになってからかな。

中日など4球団で活躍した落合中日など4球団で活躍した落合――じゃあ、それまでの落合さんと、実際に対戦してみた落合さんとでは、まったく印象が違ったんですか?

八重樫 全然違いましたね。落合は中日でも四番だったけど、打線の厚みは増すし、相手バッテリーとしては大変でしたよ。落合の場合はインサイドに難があったんで、インサイドをどう攻めるか。そこに頭を使ったよね。ポイントはインサイドにストライクを投げないことだったな。

――「ストライクを投げない」とは、どういう意味ですか?

八重樫 あれだけの大打者だから、「弱点」と呼べるものはないんです。でも、強いて言えば、インコースの選球眼には若干の難があった。だから、インサイドにはストライクを投げる必要はなくて、「ボール気味の球をいかに振らせるか」がポイントだった。インコースを立て続けに攻めると露骨に嫌がるのはよくわかったよ。

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