今季唯一のドラ1高校生野手の育て方。監督が語る具体的練習と井上朋也の未来 (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 高校からプロや大学、社会人に進む打者は総じて金属から木製への適応を求められるが、この点で興味深い話がある。代替大会を控えた6月頃、井上は不調に陥っていたというのだ。岩井監督が説明する。

「ずっと木製でやっていたので、金属にしたらアルミバットくらい軽く感じちゃったというか。代替大会があるとなって金属に戻し、バットの重みやヘッドの重さがずれたことで、少し調子が落ちました。7月くらいから金属でも打てるようになりましたね。今は木のほうが合っています」

 井上はヘッドの重みを効かせてスイングするタイプだ。金属よりヘッドの重さがある木製のほうが操作しやすいという。多くのスカウトが「プロ向き」と評価したのは、こうした点を見抜いたからかもしれない。

「内川選手のように打率もホームランも打てて、毎年コンスタントに3割30本を打てるようになること。そして息の長い選手になることが目標です」

 井上は打者としての理想をそう掲げた。3割30本塁打と来れば、30盗塁を期待したくなる。

「打つだけではなく、走力も自分の武器のひとつです。盗塁についての目標は、今はとくにないですけど、鈴木誠也選手(広島)のように打って守れて走れる選手になりたいです」

 守備力はどうか。岩井監督は太鼓判を押す。

「悪くないですよ。やればやるほどうまくなると思います。打球の反応はめちゃくちゃいいから」

 サードになってまだ1年。実戦経験を重ねるにつれ、守備はうまくなっていくものだ。打席では中距離打者に「長」を加えている途上で、かつ足もある。来年プロ入りする選手たちの中で極上の素材であることは、高校生のドラフト1位という評価が何より物語っている。

 今後ソフトバンクで待ち受けるのは、12球団で最も激しい競争だ。過去には埋もれていった好素材も少なくないが、井上にとってプラスに働く可能性がある。岩井監督はそう見ている。

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