今季唯一のドラ1高校生野手の育て方。
監督が語る具体的練習と井上朋也の未来
「運命の日」と言われるドラフト会議当日。
ソフトバンクの1位指名で井上朋也の名が呼ばれると、埼玉県加須市にある花咲徳栄高校の関係者たちからどよめきが起きた。2017年夏に埼玉県勢で初の甲子園優勝、過去5年連続でプロ野球選手を輩出してきた同校にとって、ドラ1を送り出すのは初めてだったからだ。
ソフトバンクからドラフト1位で指名された井上朋也「今日初めて、井上君の背中が大きく見えました」
就任19年目の岩井隆監督は、満面の笑みを浮かべて教え子にエールを送った。
今年指名を受けた12人のドラ1の中で、高校生野手は井上のみ。ソフトバンクが高校生の内野手を1位指名したのは、2009年の今宮健太以来だった。
「このような高い評価をしていただいたので、期待に応えられるようにこれからも励んでいきたいと思います」
高校入学直後の春季大会から外野手として先発出場し、2年半で通算50本塁打。今年はコロナ禍で多くの試合が中止に追いやられたなか、大台に到達させた。
「自分はとくに遠くに飛ばせるわけではないので、中距離バッターを目指して今はやっています」
17歳の井上は、現在地をそう捉えている。
では、20代中盤から後半で脂が乗ってきた頃、完成形は中距離打者か、あるいはホームランバッターか。そう聞かれた岩井監督は、独特な表現で未来予想図を描いた。
「"中・長距離"だと思います。一発は、これから身体がもう少しできてきたら変わるだろうし。うまくいけば"中・長距離"で、走れて、守れて、全部できる選手になると思いますね」
長距離打者は、中村剛也や山川穂高(ともに西武)のようなホームランアーティストタイプだ。対して中距離打者は、打率3割前後で本塁打を15本以上打てるイメージだろう。
それらのハイブリッドと言える"中・長距離"打者の代表格が、山田哲人(ヤクルト)や坂本勇人(巨人)、浅村栄斗(楽天)。3人はもともと中距離タイプだったのが、技術やパワーなどを高めた結果、柵越えが増えていった。
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