2020.08.30

巨人・直江大輔が持つ投手としての
「品」と「牙」。高校最後の夏に見せた熱投

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

 ストレートも変化球も、70%以上の確率で捕手の構えたミットに投げ込める。こんな高精度なコントロールを持つ高校生なんて、そうはいない。

 5回なら1失点、7回なら2失点、完投すれば3失点......大崩れすることなく、いつも涼しい顔で試合をつくっていく。チームを指揮する者にとって、これほどありがたい投手はいない。

 そんな直江のベストピッチングではないかという試合を見ている。2018年の5月末、練習試合で松本にやってきた作新学院との一戦だ。

 この試合、立ち上がりから直江のピッチングは冴えに冴えた。打者の手元でキュッと曲がるスライダーと、PL学園時代の前田健太(現ツインズ)のようなタテ割れのカーブ、それにスッと沈むボールはフォークなのか、チェンジアップなのか......。ストレートは140キロ前後だが、変化球を巧みに操り"緩急"で勝負する。とにかくバリエーションが豊富で、実戦力の高い作新学院打線を完全に翻弄していた。

 この作新学院との試合前日、直江に少し話を聞いていた。

「うーん、やっぱりピッチャーは緩急でタイミングを外すのが仕事だと思うので......」

 ここまで話すのに、結構な時間を要した。「うかつに笑顔など見せないぞ」という面構えに、いかにも投手らしい気難しさが漂っていた。

「150キロとか、やっぱりかっこいいですし、憧れた時期もあったんですけど、自分のピッチングを崩しちゃって......ピッチャーはバッターの顔色を見ながら、コンビネーションを使って考えながら投げるのが面白い。スピードは、コツコツと練習を積んで、体ができてくれば自然と速くなると思うんです」

 打者にフルスイングさせず、野手のポジションをしっかり確認してから投球に入る"作法"のよさ、一塁けん制のスピードとタイミングのすばらしさ。投手として必要なものはすべて持っていた。

 作新学院との試合、ネット裏には複数のスカウトが直江のピッチングに注目していた。5回が終わったところで、多くのスカウトが席を立つなか、ある球団のスカウトだけは試合終了まで背中をピンと伸ばしたまま、直江のピッチングに目を凝らしていた。