山田哲人は「何かを持っている」男。
NPB新記録を衝撃の満塁弾で決めた
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日本プロ野球名シーン
「忘れられないあの一打」
第4回 ヤクルト・山田哲人
日本人右打者シーズン最多安打記録達成の満塁弾(2014年)
2014年9月25日、神宮球場ではヤクルトの選手たちがいつものように早出打撃練習で汗を流していた。
「中日とはあと5試合残っているんだっけ?」
飯原誉士は自分の練習を終えると、ティー打撃を始めた山田哲人に声をかけた。
「あと4試合です」
山田が答えると、トスを上げていた杉村繁打撃コーチがこう声をかけた。
「シーズンも最後の直線コースだ。ここまできたら(シーズン)最多安打のタイトルを獲ろうぜ」
日本人右打者のシーズン最多安打記録を満塁本塁打で決めた山田哲人 この時点で、1位の山田と2位の大島洋平(中日)との差はわずか1本だった。すると、この会話に村田正幸打撃投手も加わった。
「いけよ30本塁打! 目指せよ打率3割、30盗塁! 今、盗塁は何個だっけ?」
「15個です」
「走れよ、あと15個(笑)。よし、来年は4割、40本、40盗塁を目指せよ!」
村田打撃投手がゲキを飛ばすと、横で練習していた相川亮二が「春先は30盗塁を最初に達成すると思っていたけど、今はいちばん遠くなったな」と笑った。話題の中心である山田は、手にしたバットを軽く振ってつぶやくようにこう言った。
「最多安打のタイトル獲りたいなぁ」
このシーズン、プロ4年目の山田は開幕するとおもに「1番・セカンド」を任され、衝撃的な活躍を見せていた。たとえば、7月28日時点の成績を見ると、それまで大きな実績のない22歳の選手とは思えない、堂々とした数字が並んでいる。
打率/3割3分1厘(リーグ3位)
本塁打/16本(リーグ6位)
安打数/117本(リーグ2位)
出塁率/4割1分5厘(リーグ3位)
長打率/5割5分4厘(リーグ2位)
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