「なんであんなに叩かれてるの?」と心配されるDeNA倉本寿彦の苦闘 (5ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu


 プロ野球選手は一般人から見れば、別世界に住む超人に思えてしまう。160キロの球を投げたり、信じられないようなホームランを打ったり。何億円もの金を稼いで、何万人もの観衆のプレッシャーにも負けず、平然と凄いプレーをやってのける。

 でも、そんな超人なんて本当はいない。大多数の選手は脳味噌が焼きつきそうな重圧の中で必死になって戦っている。ファインプレーをした夜、布団の中で思わず笑みがこぼれる日もあれば、ひとつの野次で心がズタズタにされることもある。

 倉本だって同じ人間だった。ただ違うのは、プロのグラウンドに立った以上は、どんな批判も受け容れて戦い続ける覚悟を持っていることだ。一度だけこんな話をしてくれたことがある。

「僕、本当はメンタルが弱いんです。たぶん、人よりも。周りに見せないようにしているだけで、ミスをすると一回一回、かなり落ち込んでいます。ただ、引きずらないようにするんです。プロ野球選手として、みんなの代表として試合に出させてもらっている以上、戦う姿勢を見せなければそこにはいられない。ミスして落ち込んで終わりじゃないですからね。その後もプレーは続くし、人生だって続く。何を言われても、どんな大きな失敗があっても、諦めずに前を向き続ければ、最後には笑えると信じていますから」

 17年。日本シリーズ第2戦の舞台で、内野ゴロを好捕した柴田竜拓の送球を落として失点に繋がった大きなミス。18年、東北楽天戦。茂木栄五郎の平凡なセカンドゴロを「感覚の違い」で内野安打にしてしまい二軍落ちとなった、いわゆるボーンヘッド。

 過去、一軍戦に出始めの梶谷隆幸や宮崎敏郎が同じようなミスをやらかして二軍に落ちた時には、口々に「もう終わったと思いました」と絶望したような痛恨のミス。そんなミスの後で、倉本は何を思ったのか。

(後編につづく)        

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