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ヤクルトを戦力外となった元ドラ1左腕は
南半球で野球を楽しんでいた (3ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 その直後、村中が投じた1球目は、審判のはるか上を通ってバックネットに突き刺さった。海外では使用球が変わり、精密なコントロールが身上の日本人投手は、その敏感さゆえに悩まされることが多いと聞く。試合後、村中にボールが合わなかったのかと問うと、マウンドが原因だったという。

「ボールは日本とあまり変わりません。でも、マウンドが粘土質で硬いんです。大体スパイクで掘れるんですけど、ここのマウンドはなかなか掘れなかった。まあ、投げながらマウンドに合わせていきましたけど、そういうのにもうまく適応しながら投げていかないといけないですね」

"プロ野球"と言っても、その環境は日本とはまったく違う。オークランド・トゥアタラの本拠地は一塁側にしか観客席がない。それもそのはずで、もともとラグビー場だったところを無理やり野球場として使用しているのだ。野球シーズンが終われば、再びラグビー場に戻すらしい。

 そんな球場だから当然、専門のブルペンなどない。一、三塁側のファウルゾーンにベンチを並べ、ホームベースが2つ置かれた場所がブルペンである。木でこしらえた台に土を盛り、それをマウンドして使っている。ピッチャープレートは、その土が盛られた台の真ん中に1本の木が埋め込まれているだけだ。

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