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ヤクルトを戦力外となった元ドラ1左腕は
南半球で野球を楽しんでいた

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 村中恭兵は2020年の年明けをニュージーランドで迎えた。今やオフの風物詩となったNPBのトライアウトで、彼の名を目にしたファンは多かっただろう。

 村中は2005年秋にヤクルトから高校生ドラフト1巡目で指名され、2010年、2012年に2ケタ勝利をマーク。トライアウトを受けた選手のなかではトップクラスの実績を誇っていた。そんな村中が妻を残し日本を発ったのは、オーストラリア・ウインターリーグが開幕して間もなくの頃だった。

オーストラリア・ウインターリーグで奮闘している村中恭兵オーストラリア・ウインターリーグで奮闘している村中恭兵 昨年は一軍での登板はなく、オフに自由契約を言い渡されたが、まだ32歳。現役から退くことは頭になかった。

 もともとトライアウトに参加するつもりはなかったが、状態がよかったため参加することにしたのだという。戦力外通告後、しばらく続けていた練習をいったん止め、2週間ほどノースローの状態からトライアウトに挑んだ。

 久しぶりの実戦登板だったが、投げられたことに手応えを感じた。トライアウトから1週間ほど待ち、日本のどこの球団からもオファーがないとわかると、村中は荷物をまとめ海を渡った。

「最初は12月中旬に行くつもりだったんですよ。でも、早めに来てくれてみたいな感じになって」

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