今宮健太が甲子園で見せた伝説の10球。「チビでもやれる」と証明した (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kouchi Shinji

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 試合後、菊池との対戦について、今宮はサバサバした表情でこう振り返った。

「(インコースに)100%くるとわかっていても打てなかった。スピードも威力もあったし、本当にいい球でした」

 のちに、今宮が「インズバ」と表現するようになった菊池のインコースの球をいかに攻略するのか。夏に向かっての興味は、その一点に絞られた。

 そして最後の夏、大分大会を勝ち上がり甲子園へとやってきた明豊は、島袋洋奨(元ソフトバンク)を擁する興南(沖縄)、秋山拓巳(阪神)がエースの西条(愛媛)、庄司隼人(元広島)のいる常葉橘(静岡)と好投手が揃う強豪校を次々と撃破し、準々決勝で花巻東と再戦を果たした。

 しかし、十分なコンディションになかった菊池のボールは本来のものではなく、5回途中で降板。「インズバ」をめぐる攻防戦も実現されることはなかった。

 一方で、この試合で強烈に印象に残っているのは、「投手・今宮」だった。今宮は先発のマウンドに上がったが、4回途中4失点で降板し、本職のショートではなくサードに入った。あとを継いだ投手陣が踏ん張り、打線も奮起。中盤に試合をひっくり返し、2点リードのまま9回表を迎えた。

 ところが、ここから花巻東が意地を見せて同点とし、なおも一死二塁と明豊のピンチは続いた。すると、この緊迫した場面で今宮がサードのポジションからマウンドに歩み寄り、背番号10の2年生投手・山野恭介(元広島)の頭をグラブでポンポンとしながら声をかけた。

 この時、山野は同点に追いつかれた責任や不甲斐なさから涙ぐんでいたという。そこへ今宮が「あとは任せろ!」と、自らの意思で再びマウンドへと上がったのだった。

 じつはこの時、今宮はタイムをかけずにポジションを離れたため、それを見た二塁走者が三進。一死三塁の大ピンチとなったが、「二塁も三塁も変わらない。自分の得意とするストレートを全力で投げるだけでした」と語ったように、まるでお構いなし。そしてその言葉どおり、スタンドまで気迫が伝わってくる圧巻の投球で2者連続三振。このシーンについて、試合後、今宮はこう振り返った。

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