2019.10.18

川崎憲次郎がどん底からMVP。
日本シリーズ2連勝で「西武を超えた」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

西武×ヤクルト “伝説”となった日本シリーズの記憶(48)
【エース】ヤクルト・川崎憲次郎 後編(前編の記事はこちら)

【神様・飯田哲也の「奇跡」のバックホーム】

――飯田哲也選手の「スーパープレー」が飛び出した、1993(平成5)年日本シリーズ第4戦ですが、この日の神宮球場には、ピッチャーにとっては追い風であり、バッターにとっては逆風となる強風が吹き荒れていました。「風」については、どのような対策で臨んだのですか?

川崎 当時のボールは今ほど飛ばない時代でした。そして、試合前にノムさん(野村克也監督)に呼ばれて、バックスクリーンの旗を指しながら、「おい、あの旗を見てみろ」と言われたんです。そして、「今日は逆風だ。完璧な当たりでなければ絶対に入らないから、思い切り投げろ」と言われました。それが安心材料となって、ストレートで思い切り勝負することができましたね。

1993年の日本シリーズで2勝を挙げ、MVPを獲得した川崎 photo by Sankei Visual――ライオンズの先発は、前年度の日本シリーズMVP・石井丈裕投手でした。相手投手に対しては、どの程度意識されるものなのですか?

川崎 この時の西武は、工藤(公康)さんもいたし、ナベキュー(渡辺久信)さんもいたし、誰が投げても一線級なわけですよ。だから、当時は「そんなに簡単に打てないだろう」と思っていたし、だからこそ「自分自身がどこまで粘り強く投げられるか?」ということを意識していましたね。この日は相手がタケ(石井丈裕)さんだったので、「2点取られたら終わりだ」と思っていました。僕の調子がよかったのは、タケさんに引っ張られた部分もあったと思います。

――この日は投手戦の様相を帯び、4回裏、池山隆寛選手の犠牲フライによる1点を守ったまま、試合終盤となりました。そして8回裏、センター・飯田哲也選手による「スーパープレー」が飛び出します。得点は1-0、場面はツーアウト一、二塁。二塁走者は代走の笘篠誠治選手。打者は鈴木健選手でした。

川崎 この場面、結局は初球を打たれるわけですけど、あまり考える間もなく、インハイにストレートを投げて甘く入ってしまった印象です。

――鈴木健選手が放った打球はセンター前へのクリーンヒットとなり、二塁走者・笘篠選手は勢いよくスタートを切って、三塁の伊原春樹コーチも右手を大きく回していました。

川崎 打たれた瞬間にホームベースのカバーに行くので、飯田さんがどんな態勢で捕球したのか、送球したのかは見ていませんでした。でも、セカンドランナーの笘篠さんがサードを回ったときには「もうダメだ。絶対セーフだ」と思っていましたよ。でも、結果はアウト。あのタイミングでアウトにできるなんて、飯田さんは神です(笑)。もう信じられないプレー。僕の中では、今でも「奇跡」としか思えないスーパーバックホームです。