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非情采配は期待の裏返し。眠れる獅子・
野間峻祥は吠えて試練に打ち勝つ (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 非情ともいえる采配に、チーム内からも「なぜ?」の声は上がっていた。

 チームは連敗中で、借金はワースト8となっていた。この試合、広島は首位・巨人を最終回に逆転して、その後の巻き返しのきっかけをつかんだ。今では分岐点と位置づけられる試合だが、一方で敗れていれば逆の意味で分岐点となっていたかもしれない危険性をはらんでいた。

 勝利の殊勲者は石原慶幸だったが、今季初めてベンチスタートとなった野間が反撃の狼煙(のろし)を上げていた。

 8回裏に2点を勝ち越されて迎えた9回表。前の回に守備から出場していた野間が打席に立つ。

「絶対出てやる、その気持ちだけでした」

 後日そう言葉を吐いた。

 巨人のライアン・クックの初球をたたいた打球は高く弾み、サードの頭上を越えた。一塁上で感情を解放した野間の咆哮(ほうこう)は、まるで自分の縄張りを主張して哮える肉食動物のように、自分の定位置を奪い返そうする獣のようだった。

 その姿は、野間の気持ちが痛いほど分かっていたチームメイトの士気を上げ、逆転劇につなげた。

 だが、その後もスタメン落ちを味わった。4月1929日、そして1番に固定された5月以降も11日のDeNA戦でスタメンから外された。

 このDeNA戦では、7回に巡ってきた打席でライト線に運び、トップスピードに乗った走りで三塁へ滑り込み、あの日のように塁上で吼えた。

 野間の能力を誰よりも高く評価しているのは首脳陣。「まだ自分の形もわかっていない」と東出輝裕打撃コーチは無限の可能性を感じている。いわば野間はまだ、「眠れる獅子」。期待が大きいゆえ「もっとできるはず」と感じているのだろう。だから、その才能を目覚めさせようと、あえて厳しい指導と起用で這い上がらせようとしているのかもしれない。

 とはいえ、野間のなかには、さまざまな感情が入り交じっているはずだ。それでも負の言葉は飲み込む。

「内容がよくない日が続けば、先発落ちする。控えている選手が(先発で)出てもおかしくない。チーム内でも隙を見せられない」

 表現の場はグラウンドであり、プレーと結果でしか自己証明できない。

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