2019.06.01

オリックスが「世界のナカガキ」獲得。
MLB選手もその運動学に心酔

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sportiva

 ナカガキ・ステーション――。

 サンディエゴ・パドレスがスプリング・トレーニングを行なうアリゾナ州ピオリアには一昨年、昨年と、そう呼ばれる一角が存在していた。メジャーを目指す若い選手が、練習メニューの合間に立ち寄って”ナカガキ”の指導を受ける。

 実際、アメリカでも彼の指導法は斬新で、多くの選手からの信頼を得ていた。何しろ、今シーズン、若手のみで組まれているパドレスのローテーションの全員が彼の指導を受けたピッチャーなのだ。野球の投打のなかで体をどう動かせばいいのか。そのためにどういう体力が必要で、その体力にどんな技術をかみ合わせれば爆発的な力を発揮できるのか。そこまでを見据えて選手に出会うと、”ナカガキ”には見えてくる。今、この選手は、動きのどこに着眼点を置くべきなのか、ということが……。

昨年までサンディエゴ・パドレスで選手たちの指導を行なっていた中垣征一郎氏 中垣征一郎。

 2004年に日本ハムファイターズのチーフトレーナーとなり、その後、2012年にダルビッシュ有が渡米した際には、ダルビッシュ自身の強い希望を受けて専属トレーナーという肩書きでテキサス・レンジャーズに入団した。

 2013年に帰国後はトレーナーではなく、トレーニングコーチとしてファイターズに戻り、背番号もなく、ユニフォームを着ることのない異例のコーチとしてチームを支えてきた。当時の栗山英樹監督が全幅の信頼を置いた、トレーニングと運動技術の専門家である。

 中垣さんは2017年から2年間、サンディエゴ・パドレスに請われてスポーツ科学の応用を担当するディレクターに就任。メジャー、マイナー問わず、パドレス傘下のチームを巡回し、選手たちを指導してきた。

 その”ナカガキ”の獲得に、今年、成功したのはオリックス・バファローズだった。

 バファローズの福良淳一GM兼編成部長、中嶋聡二軍監督とファイターズ時代に信頼関係を築いていたことから、中垣さんはバファローズのオファーを受けることに決めた。もちろんパドレスからも残留の要請を受けており、若い選手たちが育ち始めていたこともあって中垣さんにとっては苦渋の決断ではあったが、再び活動の場を日本へ移すことにしたのである。