オリックスが「世界のナカガキ」獲得。MLB選手もその運動学に心酔 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sportiva

 ルーキーだった去年、開幕ローテーション入りを果たして鮮烈なデビューを果たした田嶋は、前半だけで6勝をマークしながら、左ヒジを痛めてシーズン途中から戦線を離脱。その後は治療に専念していた。田嶋の復帰はバファローズにとっては喫緊の課題だ。さらに、どの選手も可能性を秘めているとする中垣さんに、ルーキーの野手について訊くと、興味深い答えが返ってきた。

「頓宮(裕真、ドラフト2位、亜大)と中川(圭太、ドラフト7位、東洋大)は期待値が高いのは当然として、高卒のふたりの野手、太田(椋、ドラフト1位、天理)と宜保(翔、ドラフト5位、未来沖縄)は本当にいいものを持っています。太田も宜保も高校を卒業したばかりですから体力的にはまだまだ発展途上ですし、技術的にも課題は多いと思いますよ。ただ、彼らはまったく個性が違っていて、そこが魅力的なんです。太田は整理整頓して理解しながら前へ進むことができるタイプ。宜保のほうはスピードもあって、野球が自由奔放です。感覚的なタイプですね」

 中垣さんはもともと陸上の選手で、野球をやってきたわけではない。だから中垣さんが動きを指導すると、ピッチングコーチやバッティングコーチの領域に踏み込んでいるのではないかと煙たがられ、ケガ人の起用法について意見すると、トレーナーの領域に踏み込んでいるのではないかと痛くもないハラを探られる。野球の動きの構造をきちんと見極めながら、動作改善のための指導をするにしても、プロ野球選手の経験がないというのは、この世界ではそういう扱いを受けることがしばしばなのだ。

しかし中垣さんは、フィジカル、トレーニング、運動技術のプロフェッショナルだ。駆け引きや配球を含めたピッチングやバッティングを指導するのがコーチなら、中垣さんは投げる、打つ......そのための有効な動き方を教えている。中垣さんが口にする理論に最初は首を傾げていたコーチや選手たちも、効果を体感することで歩み寄ってくる。

バファローズの二軍に撒かれた種は、風通しのいい環境のなかでたっぷりと陽の光を浴び、ちょうどいいだけの水を、適切なタイミングと頻度で与えられている。

 舞洲は今、そんな空気に包まれていた――。

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