自宅にマウンド、平均台でシャドー...。武田翔太の探求心が止まらない (4ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro


 その話を聞いて、武田の高校時代の言葉を思い出した。

「わからないなと思ったことは、調べてみるんです」

 今も、武田の読書家ぶりを知る人は少なくない。時間にして5分程度の立ち話だったが、それだけでも今年はもちろん、さらにその先の武田が楽しみになってきた。うしろから前に体を移動させる投げ方を、武田は「フラットな投球」と表現した。

「自分は身長もあるし、腕が長いので、その高さを目一杯利用したスタイル......"タテ軸"を利用する方が合っているということに気づいたというか。やっぱり、角度とボールの強さを意識して上から投げ下ろした方がいいんですよね」

 この日のブルペンが、じつにすばらしかった。気持ちよさそうに上から腕を振り下ろし、そのボールが高谷裕亮(ひろあき)の構えたミットにビシッと決まっていた。

「できるだけ高いリリースポイントから投げ下ろして、できるだけ低めに決める。ヒザあたりの高さなら打っても内野ゴロにしかならないし、打たれたとしてもせいぜいシングルヒットじゃないですか。仮に高めにいっても、低めを狙って腕を叩いて投げた時の高めというのは、いちばん破壊力のあるストレートになるんですよ。自分としては、狙って投げているのは(構えた)ミットよりももっと下です。内角、外角はほとんど意識してないです。とにかく高い位置から低く、低く......です」

 そう語る武田だが、今春の練習試合、オープン戦と炎上が続いていた。しかし、3月13日の巨人戦では3イニングを投げ1安打無得点に抑え、さらに7奪三振と完璧なピッチングを見せた。そう言えば、キャンプ中にこんなことも言っていた。

「なんだが、やっと野球がわかってきたような......悩まなくなりましたね。"悩む"って、野球をやっていく上で邪魔なものなので。野球がわかり始めてきて、こういう時はこういう方法でやれば改善できるっていうのがようやくわかってきました。たとえばバランスが悪くなった時は、平均台の上でシャドー(ピッチング)をやってみるとか」

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