2019.03.16

自宅にマウンド、平均台でシャドー…。
武田翔太の探求心が止まらない

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 ソフトバンクの宮崎キャンプは、テーマパークかと見間違うほどだ。駐車場にはぎっしりと車が並び、ズラリと100メートル近くも軒を並べる屋台。そしてなにより、1日に3万人近く訪れるファンの波。練習場を移動する選手を追いかけるファンの喧騒が、華やかな雰囲気をさらに盛り上げている。

 しかし、一歩、選手たちの鍛錬の場に足を踏み入れると、熾烈なサバイバルに生き残ろうとする選手たちがぶつかり合い、ピリピリとした緊張感を生んでいる。

3月13日の巨人戦で好投し、開幕ローテーション入りに大きく近づいた武田翔太

 とりわけブルペンだ。とくに私が見た日のブルペンはすごかった。

 一軍投手陣が投げ込むのは室内ブルペンだが、左端から武田翔太(25歳)、東浜巨(28歳)、田中正義(24歳)、高橋礼(23歳)、千賀滉大(26歳)、大竹耕太郎(23歳)。さらに入れ替わるように、ドラフト1位の甲斐野央(22歳)、2位の杉山一樹(21歳)がピッチングを開始した。

 互いに隣り合う快腕、剛腕を意識しながら、懸命に腕を振っていた。みんな大きく、速く、そして若い。

「大隣(憲司)、攝津(正)、五十嵐(亮太)が抜けて、和田毅も故障が癒えていない。『ホークスの投手陣は大丈夫か?』ってずいぶん言われますけど、彼らが順調に育ってくれれば、また2、3年後には”投手王国”じゃないですか」

 あるチーム関係者のひとりが、そんなことを話してくれた。その話を、ピッチングを終えた武田に告げると、こんな答えが返ってきた。

「ホントそのとおりですよ。去年一軍で投げたからといって、今年も投げられる保証はどこにもありませんから……」

 そう言って表情を引き締めたが、その直後「年に一度、宮崎で会う仲になりましたね」と言って笑った。その笑顔は、自らを「田舎の高校生」と言っていた時と同じだった。