「なんじゃこりゃ!」とキャンプで驚き。2球団で見つけた4人の逸材 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 こんな大器が"育成"に埋もれているのだから、"支配下"の選手たちはとてもじゃないが、「2~3年はファームで鍛えて......」なんてのんきなことは言っていられないと思っていたら、ブルペンの一番奥で活きのいい投げっぷりをしている右腕がいた。

 一昨年のドラフト1位・吉住晴斗(185センチ、83キロ)だ。その年のドラフトでソフトバンクは、早稲田実業の清宮幸太郎(日本ハム)を外し、履正社の安田尚憲(ロッテ)も外し、さらに仙台大の馬場皐輔(阪神)まで外してしまうという不運に見舞われたが、"最終兵器"として獲得したのが吉住だった。

 ボールを離す瞬間に全身の力がパーンと爆発できるようになってきた。だから、リリースの瞬間に指先を切る時の「パチン」という音が聞こえてくる。ストレートの勢いなら、少し前に室内のブルペンで投げていた東浜と遜色ない。

 無理に体を大きく使おうとしすぎず、身の丈に合った過不足のない"出力"だからこそ、うまく力をボールに伝えることができ、強い回転のまま捕手のミットに突き刺さっていく。ドラフト当時は「誰だ?」と思う人もいただろうが、「ソフトバンクの吉住晴斗」という名前は覚えておいた方がよさそうだ。

 未知の魅力がソフトバンクなら、オリックスのブルペンでは社会人出身の2人の"実力派ルーキー"に心を揺さぶられた。

 構えたミットがピクリとも動かない"ピンポイント"のコントロールが武器のサイドハンド、ホンダ熊本からドラフト3位で入団した荒西祐大(178センチ、83キロ)だ。社会人3年目のシーズンから6年間、エース格でマウンドを守り、満を持してプロ入りした姿は、昨年限りで現役を引退したソフトバンクの攝津正と重なる。

 高山郁夫一軍投手コーチが打席に入ってバットを構える。26歳のルーキーにとって、ブルペンの緊張感は格別だろう。ピンと張り詰めた空気のなかでも、荒西のコントロールの精度は変わらない。社会人で8年磨き上げた技術を、臆することなく披露する。

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