2019.03.01

ヤクルト石井琢朗コーチの珍練習再び。
ボールではなくバットが飛んだ

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Nikkan sports

 ヤクルトの春季キャンプ(沖縄・浦添市)が2月25日に終了した。練習は長く厳しかったが、内容の濃さに時間を忘れてしまうほど充実していた。そのなかでも、とくに引き込まれたのが早出練習での”バット投げ”だった。

 スイングしたバットを遠く放り投げる”バット投げ”は、じつにシンプルな練習だが、その風景から連想されるホームランを打つことを目指しているわけではない。

浦添キャンプの名物となった早出のバット投げ練習「体幹を使ったなかでのスイングを体に覚えてもらいたいと思って始めました。バッティングはボディバランスが重要であり、バット投げはその一環で、言ってみればバッティングをするための予備運動です」

 石井琢朗打撃コーチは”バット投げ”の意図についてそう説明してくれた。石井コーチは、これまでも前頭葉を鍛える”暗算ティー”や、体幹と再現性をつくる”サンドバッグ&メトロノーム”など、ユニークなメニューをいくつも考案してきた。

「バットを高く遠くへ飛ばすために必要なのは体幹です。でも、この練習で一番大事なことはバットを真っすぐ飛ばすこと。そのためにはスイング軌道と腕の使い方をしっかりしないといけない。とくに、うしろの腕の使い方ですね。前の手をしっかりとリードして、力を入れすぎずに、ヒジは内側から出す。よく、インパクトの時に手首をこねたりする選手がいますが、そうなるとボールは真っすぐ飛びません。極端に言えば、バッティングとはトップの位置からインパクトまでなんです。つまり、インパクト以降は力を入れる必要ありません。バット投げでそこを身につけてほしい」

 バット投げの練習がスタートするのは、午前9時15分を過ぎる頃で、場所はライトのファウルゾーン付近。選手たちのフルスイングしたバットが、クルクルと回転しながら、バックスクリーン方向に飛んでいく。ひと投げするたびに選手たちから歓声が上がるなど、じつに楽しそうで、競技会を見ているようでもある。

「オッケー」

「今のはまあまあ」

「飛ばしているのはバットだけど、ボールをイメージする!」

「ヒジの抜けがよかったよ」