2019.02.04

貴重な左腕が悪夢の離脱から復帰。
広島・床田が開幕ローテ入りを狙う

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Kyodo News

 うなりを上げる剛球。気合いとライバル心がぶつかり合う熱気が、ブルペン内に充満している。広島キャンプの恒例行事として、初日は多くの投手がブルペン入りして投球練習を行なう。

 近年は選手の仕上がりも早く、キレのいい球がミットに収まり心地よい音を響かせる。速球を売りとする投手は「ドヤッ」と言わんばかりの真っすぐを投げ込む……。そんな熱気を帯びたブルペンで、床田寛樹(とこだ・ひろき)は静かに、そして淡々と左腕を振り続ける。空白の期間を埋める、ゼロからの戦いが幕を開けた。

2017年にルーキーながら開幕ローテーション入りを果たした床田寛樹「僕はブルペンではたいしたことできませんから。対打者にどれだけ投げられるかだと思っています。ブルペンだけでなく、走るのも遅いので、対打者でしかアピールできない」

 そう話す床田は、ブルペンで目を引く速球派にも負けない武器を持っている。抜群の制球力に球の出どころが見えにくいフォームから繰り出すキレのある球。一昨年のルーキーイヤーに、才能の一端を見せた。

 2017年、前年優勝球団に加わった新人投手でただひとり、開幕ローテーション入りした。登板2試合目の4月12日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初勝利を手にした。順風満帆の船出と思われたが、初勝利後の登板3試合目の4月19日、DeNA戦(マツダスタジアム)の4回。突然左ひじに痛みが走った。

「何の予兆もなかったんです。本当にあの1球まで違和感もなかった」

 4回2失点で降板。診断の結果、左肘内側筋の筋挫傷だった。保存療法を試みたものの症状が改善しなかったため、7月に「左肘関節内側側副靱帯再建手術と尺骨神経剥離手術」を受けた。手術に踏み切るまでの時間も不安に押し潰されそうだったが、長く続いたリハビリ生活もまた、苦しい日々だった。

 術後はギプスで患部を固定し、何もできない日々を過ごした。11月にキャッチボールを再開したものの、復帰までの道のりは一進一退。キャッチボールの距離は思うように伸びず、苦手とする走り込みの量は変わらずに多い。

「次、でっかいケガしたらもう辞めます。本当しんどい。もう2度とあの時には戻りたくない。何で俺、こんな苦しいことしないといけないのかって思っていた」