輝星、幸太郎、佑樹...栗山英樹が考える「甲子園スター」の育て方 (6ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

―― 50歳のときに監督に就任して、今年で8年目になります。20代は選手として、30代は取材者として、40代は教育者としても生きてきた監督にとって、この50代の過ごし方、どんなふうに感じていますか。

「こんなに時の流れを早く感じたことはないし、こんなに必死になってる自分がいたこともない。こんなに充実していて、50代のこの10年が一番、幸せなのかもしれないなと思ってるよ」

―― 監督業というものの欠片、何か見えましたか。

「長くやらせてもらえばもらうほど、監督という仕事の難しさがわかってしまう。その難しさに打ち勝つということではなく、いつも原点に立ち返ることを忘れちゃいけないと思っているんだ。それこそ、佑樹のためにオレがしてあげられることは何なのか、としか思ってない。矛盾しているけど、それをすべての選手に対して思っているわけ。その選手にとって何が一番いいことなのかということを今の時点で、全力で考える。それが監督という仕事の根っこだとオレは思っているし、選手のためになると思えば、冷たいと思われようが、厳しいと思われようが、容赦なく行くからね。

 去年の反省はもう終わっているし、頭のなかは今年のことしか考えてない。生きものとして、戦いの場に放り込まれたとき、生き抜くための直感が浮かぶように蓄えるべきものを蓄えておく。そういう準備をしておかないと、試合中、野球の神様の声が聞こえないんだ。その準備をするには、この雪のなかに閉じ込められた環境は最高なんだよね。ウサギとフクロウが一緒にいてくれるから、ちっとも寂しくないしね(笑)」

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