2018.11.11

クビ覚悟から侍ジャパンへ。
楽天・田中和基は独特の発想で飛躍した

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Getty Images

 楽天の田中和基が見せた今シーズンのパフォーマンスは、ちょっとしたサプライズだった。

 1年目の昨季は51試合に出場し、59打席にしか立たなかった。出番のほとんどは代走と守備要員である。そんな男が今季6月からレギュラーに定着すると、1番打者として球団生え抜き日本人では最多の18本塁打を記録。21盗塁と本来の持ち味も発揮した。

今季ブレイクを果たし、初の侍ジャパン入りした楽天・田中和基 この唐突な飛躍には誰もが驚いた。平石洋介監督の言葉が、もっともわかりやすい。

「田中が今シーズンこうなるって予想していたか? 誰も予想しなかったでしょ。我々としても『出てきてほしいな』って気持ちは当然ありましたよ。もともと足と守備はありましたからね。でも、打つ方でもこれまでにないものを見せてくれたのは驚きでした」

 レギュラー獲得を期待されていた若手が、一躍、新人王候補に名乗りを上げている。そして、日米野球では初の侍ジャパンに選ばれ、球界トップクラスの選手である柳田悠岐、秋山翔吾らと外野陣を形成する。

 1年足らず。たったそれだけの期間で、田中が成長を遂げた背景は、侍ジャパン入りを果たした際に残した言葉に隠されている。

「何もかもが初めて。日本を代表する選手が集まるので、いろんなものを吸収したい」

 一見するとありきたりなコメントである。だが今季を振り返れば、田中はこれを忠実に守り、学び、試しながら結果を残した。

 時を遡れば、田中の探究心は野球を始めた時期から備わっていた。

 もともとは右打者だったが、小学生の頃から遊び感覚で左打ちの練習もしており、立教大4年には「上のレベルで野球をするなら、右でも左でも同じくらい打てないとダメだ」と、完全に両打ちとなった。打撃での持ち味は、右でも左でもフルスイング。その様がスカウトの目に留まり、プロの扉を開いた。