ローテ死守の葛藤を超えて...。
DeNA井納翔一「優勝への配置転換」 (4ページ目)
そんな井納に"中継ぎ投手転向論"が出てきたのはキャンプの中頃だった。ベイスターズのウィークポイントと言われる7回。そこを任せられる投手として井納を中継ぎに配置すれば、8回パットン、9回山﨑康晃で勝ちパターンが確立する。昨年の日本シリーズでも中継ぎで結果を残したことから、このオフに何人かの野球解説者が井納中継ぎ転向説を唱えていたのも知ってはいた。
これについて、キャンプ中に井納はこう語っている。
「僕は先発ローテに入ることしか考えていませんけどね。短期決戦はまったく別ですよ。でも、今、ファームにいる若い選手や、今年来年のドラフトで入ってくる右ピッチャー。その中から監督が先発を任せたいと思うような選手が入ってくるまでは、絶対に譲りたくないです。とはいえ、チーム事情で任せられたら、その場所で生き残るために頑張ります。
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そして、3月25日。開幕を前にラミレス監督が井納を中継ぎとして7回に起用することを決断した。「このままではいけない。優勝するには何かを変えなければいけない」。それは井納だけでなく、指揮官も同じ思いだった。
井納の代わりの先発右投手には飯塚悟史や京山将弥などの若い投手が名乗りをあげている。ラミレス監督の勝つための決断は、ローテーション入りにこだわっていた井納の耳にどんな響きとして届いたのか知る由もない。
だが、井納は受け入れた。「優勝するための戦略」としての転向。そんな指揮官の思いに先発投手としてのプライドは捨てて、中継ぎ投手としてチームを勝たせることをプライドにする道を選んだ。
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