「バカになれる男」楽天・岡島豪郎は、選手会長、第3の捕手と大忙し
「会長!」
チームメートからそう呼ばれても「どこか他人事のような感じがする」と、楽天の岡島豪郎(たけろう)は自嘲気味に話していた。
「全然、わかんないっす。選手のみんなからそう呼ばれるのは慣れないっすね。『会長......誰?』みたいな(笑)」
今シーズンから楽天の選手会長になった岡島豪郎 今シーズンから銀次に代わり、岡島は楽天の8代目選手会長を務めることなった。新たなチームのリーダーとなったわけだが、岡島はその資質を兼ね備えた男である。それは、監督の梨田昌孝の言葉からも理解できる。
「岡島は常にベンチで声を出してくれるし、本当に元気がある選手。試合に出ない日もチームを盛り上げてくれるし、そういう選手はチームに必要だと思っています」
チームが苦しい時こそ笑い、声を張り上げる。時にはベンチで、年上、年下関係なく、ちょっかいを出したりもする。とにかく無邪気。だが、それは岡島自身が意識的に行なっている振る舞いでもある。
彼は、バカになってチームを盛り上げられる選手なのだ。
かつて岡島にこんな質問をしたことがある。「岡島選手はバカになれる選手だと思うか?」と。
うん、うん......岡島は細かく首肯(しゅこう)しながら質問を咀嚼(そしゃく)し、このように答えた。
「やっぱ、本当にバカになれる選手って重要なんですよね。年齢を重ねたり、ちょっとスマートにプレーしようと思ってしまうと、そういうことがなかなかできなくなるじゃないですか。でも僕は、学生時代から『バカになれる選手って強いな』って、ずっと思っていたんで。バカになる......いいっすよね」
この想いを補足すれば、岡島は経験を重ねる度に、自らを俯瞰(ふかん)できるようになった。毎年、自分よりも年下の選手が入団してくるし、徐々に頼られる存在になるだろう。ただ、そこで目線を上げてはダメだ。ひとりひとり、同じ立ち位置で接していかなければ、彼らの気持ちはわからないし、チームだってまとまりに欠けるのではないかと。
「そうっすねぇ」と岡島が口を開く。
1 / 3