鉛のベストで猛練習。ヤクルト秋季キャンプはリアル「スポ根漫画」だ (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by HISATO

 各種ティーバッティング、フリーバッティング、マシンでのバッティングなど、最低でも1日500~600スイング以上。しかも、そのすべてがフルスイングだ。

 普段は黙々とメニューをこなす選手たちだが、山田は苦悶の表情を浮かべ、廣岡大志、西浦直亨、上田剛史は動物のようなうめき声を上げ、ベテランの武内晋一は今にも泣き出しそうな表情で一心不乱にバットを振り続けていた。

 苦しみながらも誰ひとり途中で投げ出すことなく、設定をクリアすれば「よっしゃあ~!」と雄叫びを上げ、選手たちはそれぞれ顔を見合わせて笑うのだった。

 この打撃練習の中心には、広島から移籍してきた石井コーチがいる。

「キャンプでは『力強いスイングを求め、とにかく量を振る』という方針でやっています。いいピッチャー、強いボールを投げる投手に対して、小手先の打撃では攻略できません。来年、チームとして"スモールベースボール"を掲げたとしても、まずはしっかりバットを振れる力を身につける。逆方向に打つにしても、『流すのではなく、強い打球を逆方向へ』という、この意識づけが大事だと思っています」

 練習中、石井コーチは選手に向かって、"体幹"という言葉を何度も使った。

「バットって、体全体を使わないと強く振れないんですよ。腕の力だけでは絶対に無理です。そのためには、体の軸がしっかりしていないといけない。そして、強く振るからといって、常に100の力を出す必要はありません。抜くところも知って、いかにインパクトの瞬間に100の力を出せるのか。それを知るためにも、今は量を振っているわけです」

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