さらば、ヤ戦病院。石井コーチの
「悪魔の囁き」でヤクルト戦士を改造中
ヤクルト怒涛の松山キャンプ(後編)
ヤクルトは来季のスローガンを「SWALLOWS RISING 再起」と発表した。11月の秋季キャンプでは、山田哲人が「今までで一番」と言うほど激しい練習が組まれ、黙々とメニューをこなしていく選手たちの姿を見れば、絶対に"再起"を果たせると思えるのだった。
8人の選手がロングティーをしている間、別の8人は三塁側のファウルグラウンドでフィジカルトレーニングに励んでいた。腰にゴムバンドを巻き、地面を這うようにして前進していくのだが、そのゴムを手綱にしたパートナーが前へ進ませまいと引っ張る。その様子は、まるで"トカゲの散歩"のようにも見えるのだが、選手にとってはどこまでもつらいトレーニングなのである。
選手たちは1秒たりとも休むことなく、トレーニングに明け暮れていた 今シーズン、数多くのケガ人に泣かされたチームにとって、強い肉体をつくり上げることは重要課題である。橘内基純(きつない・もとずみ)トレーナーは、全体練習の1時間以上前から準備に余念がなかった。
「これまでは選手個々の課題に応じたメニューを組んでいましたが、このキャンプではチーム全体のメニューをつくり、取り組んでいます。求めるベースを能力の高い選手のレベルに設定しているので、全体的に運動量が増え、強度は高くなっています。フィジカルの劣っている選手は『きつい』と悲鳴を上げていますが、成長の度合いが数値に表れていることもあり、それがモチベーションになっていると思います」
橘内トレーナーは「もちろん、すぐに結果は出ません」と言い、こう続けた。
「自分で自分の限界値を設定して、それを壊さないように練習する選手もいますが、フィジカルトレーニングは"破壊と創造"です。今の筋肉に刺激と痛みを与え、それを回復させ、限界値を突破したところで能力が高くなります。今回の試みがうまくいけば、チーム全体の能力が引き上げられるはずです」
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