打って、走って、送って、守れる男。
今宮健太は「野球小僧」に生まれた (5ページ目)
そう振り返った今宮は、それ以降、菊池の内角ストレートを"インズバ"と表現するようになった。"インズバ"を打つために菊池との対戦映像を何度も見返し、打撃練習では4~5メートル前から投手に投げてもらい、インコースを繰り返し要求した。
その効果があったのか、今宮は3年の春から夏にかけて約30本塁打を放つなど量産。堂々の"二刀流"となって夏の甲子園に戻ってきた。
待ちに待った菊池との再戦は準々決勝で実現したが、菊池は背筋痛の影響もあり"インズバ"を投げることなく5回途中で降板。今宮は春からの成長をライバルに見せることなく、試合にも敗れ高校野球生活を終えた。不完全燃焼のラストではあったが、"打倒・菊池"に費やした時間が無駄ではなかったことは、今季の対左投手の成績からもわかる。
だからこそ、好投手が並ぶDeNAの左腕に対して今宮がどんな活躍を見せるのか注目していた。今宮も「(1番打者の)柳田(悠岐)さんの調子がいいので、僕に勝負の場面が回ってくるはず。そこで決められるようにしたい」と語っていた。しかし、結果は6試合で21打数4安打、打率.190と振るわなかった。それでも、シリーズでは6つの犠打を一度も失敗することなく決め、リーグ最多犠打男の面目は保った。
ベストナインの授賞式で、今宮はこうも語っていた。
「来季も今季以上の成績を残して、続けて受賞していけるように頑張っていきたい」
本人のなかで、より大きな可能性を感じているのがバッティングのはず。小柄な右打者のイメージを覆(くつがえ)す新たな"2番打者像"の確立を期待しつつ、個人的には"インズバ"のさばきにも注目したい。
打って、走って、送って、守って......"野球小僧"今宮健太の2018年が今から待ち遠しい。
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