ドラフト1位の引き際。あの豪腕投手は、
なぜ27歳で引退を決めたのか (2ページ目)
――しかし、プロに残れる可能性が1パーセントでもあるならば、それに懸けるのがほとんどの野球選手です。後悔はありませんでしたか?
増渕 野球に対して、悔しさはありません。ユニフォームを脱ぐ寂しさもない。精一杯やったので、最後はスパッとやめるつもりでした。だから、トライアウトも受けませんでした。
――増渕さんはプロ1年目に初勝利を挙げ、2年目の2008年には11試合に先発して3勝をマーク。2009年は練習中の打球があごを直撃するアクシデントに見舞われましたが、2010年は57試合に登板し、2勝3敗20ホールド、防御率2.69という成績をおさめ、チームにとって欠かせないセットアッパーに成長しました。
増渕 最初の数年間は、コントロールを気にするあまりピッチングが小さくなっていました。あまりに狙いを小さくしすぎると、自分を追い込んでしまう恐れがある。バッターと戦っているはずなのに、その前に自分で自分を苦しくしてしまっては意味がありません。自分のピッチングができるようになったと思えたのはプロ4年目くらいでしょうか。
入団したときの僕のセールスポイントは、力のあるストレートでした。でも、コントロールを重視するあまり、スタイルを見失ってしまったように思います。コントロールを考えて140キロしか出ないのなら、多少制球が悪くても150キロのボールのほうがバッターは嫌なんじゃないか。そう感じたのが2010年ごろでした。
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