名打撃コーチが言う。「広島と阪神のバッターには決定的な差がある」 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 ところが、2ボール2ストライクから外角に投じられた勝負球の真っすぐにコツッとバットを合わせ、ライト前に弾き返した。あれは2ストライクまでじっくり自分の打ちたい高さ、コースを待ち、最後に「そら来た」という感じでバットを出した打席だった。

 また、6月25日の試合で岩貞祐太からホームランを放った打席も興味深かった。菊池は内角に攻めてくる球を逆方向にファウルで逃げていたのだが、追い込まれると一転して引っ張り、レフトスタンドに運んだ。

 あれは菊池の名演技とも言えるが、それだけ打席できっちりとボールを見ているということにほかならない。もう"やりたい放題"といった感じだ(笑)。厳しい言い方になるが、阪神バッテリーが菊池の意識に追いつけていない。そんな印象を受けた打席だった。

 選球眼といっても、ただストライクとボールを見極めるだけではない。ストライクであっても、自分が打つべき球でなければ手を出さないことも、選球眼の大事な要素である。ただ、これが実に難しい。まず前提としてストライクのなかで自分が打てる球なのか、そうでないのかを瞬時に判断しなければならないからだ。よく打ち損じという言葉があるが、自分が打てる球に手を出し、それを捉える技術があれば必然的に打ち損じは減る。いい成績を残す打者に打ち損じが少ないのは、技術が優れているだけではなく、しっかりボールを見極めることができているからだ。

 ちなみに、打ち損じかそうでないのかはタイミングでわかる。タイミングが合っていての凡打なら打ち損じだが、タイミングが合わずに凡打になるケースは、打者の選択ミスである。つまり、打ちにいくべき球種やコースでないのにバットを出した場合だ。

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