今は新しい仲間と...。バレンティンとの
短いハグが示す田中浩康の再出発 (2ページ目)
古巣との決別と、新たなスタート――象徴的だった光景がある。前日の開幕戦、DeNAの練習に合わせ、田中はかなり緊張した面持ちで三塁ベンチ前へ現れた。するとケージの近くにいたバレンティンが田中を呼び寄せハグをした。ともに長年プレーした仲間との旧交を温める場面であったが、田中はあまり表情をゆるめることなく言葉少なに切り上げ、三塁ベンチへ入っていってしまった。その田中のぎこちない様子はもちろんだが、かつてのチームメイトの背中を見送るバレンティンのどこか哀しげな表情も印象的だった。
「今はもう新しい仲間とともに戦っているので......」
田中にこのときのことを尋ねると、きっぱりとそう語った。
DeNAの一員となった田中は、ベンチやバックヤードの様子を見ているかぎりすっかり馴染んでいるように感じられる。キャンプから若手に積極的に声をかけ、アドバイスなどをしている場面がよく見られた。
二遊間でコンビを組む倉本寿彦は田中について次のように語る。
「守備のときは浩康さんが声をかけてくれたり、僕に合わしてくれているような感じがしますね。野球をとてもよく知っている方ですし、僕は毎日野球のことを聞き、教えてもらっているような感じです。とにかくいろいろな経験をしているので勉強になります。特に野球に対する準備がすごい。自分も浩康さんのような選手になっていけるようにしたいですね」
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