ネット裏のMLBスカウトも騒然。千賀滉大が見せた「圧巻の32球」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

 2017年3月8日は、のちに「世界がKOHDAI SENGAを知った日」と語り継がれるようになるのではないか──。そんな予感を覚えるくらい、WBC初登板の千賀滉大は圧倒的な投球を見せた。

 153、151......、東京ドームの電光掲示板に数字が灯されるたびに、バックネット裏ではマウンドに向けてスピードガンを向けるメジャーリーグのスカウトが増えていった。

オーストラリア戦で2イニング4奪三振の快投を見せた千賀滉大オーストラリア戦で2イニング4奪三振の快投を見せた千賀滉大 この日、最速155キロを計測した速球だけではない。決め球として使えるほどのキレを備えたスライダーを贅沢にカウント球として使用し、追い込んでからの仕上げは今や代名詞となった「お化けフォーク」。オーストラリア打線を相手に、千賀は2回を投げて4奪三振をマークした。

「球場一周全部が日本の応援をしてくれることはなかなかないことなので、ほどよい緊張感を持って投げられました」

 千賀は登板を振り返ってこうコメントした後、自身の言葉がしっくりこなかったのか、続けてこう言い直した。

「あまり緊張はしなかったんですけど」

 ここまでの道のりは順風満帆とは言えなかった。「千賀はWBC公式球に順応できていない」と見られることも多かった。WBC球はNPBで使用する球よりもひと回り大きく感じられ、表面が滑りやすいと言われている。同じくフォークが決め球の平野佳寿とともに、落ちる系の変化球を武器にする投手の多くがWBC球への順応に苦慮していると見られていた。だが、千賀はその見方を明確に否定する。

「ボールに関してはそもそも(問題)なかったので、フォームですね」

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