炎上もプロセス。斎藤佑樹が決断した、切り札「スライダー」との決別 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 あの日もそうだった。

 2月21日、イーグルスとの練習試合で、斎藤は2イニングスを投げて5点を失った。チャンスが限られる分、その試合に懸ける気持ちが強すぎて、どうしても力が入ってしまう。余裕があれば持ち味が発揮できるのに、味方のエラーひとつで崩れてしまうのだ。そんなことが許される立場にないことはわかっていても、結果が欲しくて、ボールを思い通りに操れない。

 だから、正解がわかりにくくなる。

 どれほど準備を重ねても、フォームを固め、キレのいい真っすぐを投げても、すべての登板機会が特別なものになってしまう斎藤の"余計な力"が、そうした準備を台無しにしてしまうのだ。その繰り返しが、斎藤というピッチャーの勝てない時間を長くしてきた。

 しかし、それでも今の斎藤に光は見えている。このオフ、斎藤から"余計な力"を抜くための、ある閃(ひらめ)きが降ってきたからだ。斎藤がこう話す。

「自分がどんなピッチングをすべきなのかを考えていたとき、とにかくゴロを打たせることに集中すべきなんじゃないかと思い当たったんです。僕はずっと、アウトコースの低めにピュッといくストレートと、空振りの取れるスライダーが戻ってこなければ、この先、難しいんだろうというところに縛られていました。そのスライダーが思うように投げられなくて、ずっとストレスを感じてきた。でも、ゴロでアウトを重ねる"グラウンドボール・ピッチャー"に徹すればスライダーは必要ないし、ツーシームとフォークだけでも組み立てられます。そう考えたらストレスがなくなって、考え方がリセットされたというか、気持ちがいっぺんに晴れてきた気がしたんです」

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