炎上もプロセス。斎藤佑樹が決断した、切り札「スライダー」との決別

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 右肩の痛みが消えてからも、暗中模索は続いている。

 勝つことに苦労しなかった頃、どんなフォームで投げていたのか。どんなボールを投げていたのか。それは、今のフォームとどこが違うのか。今のボールと何が違うのか。

 こんなフォームで投げていた......はずだ。

 こんなボールを投げていた......に違いない。

2月21日の楽天戦で2回5失点と打ち込まれた斎藤佑樹。次回の登板でアピールできるか2月21日の楽天戦で2回5失点と打ち込まれた斎藤佑樹。次回の登板でアピールできるか その推測が間違いだと判断する材料は、結果しかない。投げたボールが打たれ、勝ち星がつかなければ、勝っていた頃のフォームで、勝っていた頃のボールを投げられていないということになってしまう。

 しかし、それは本当に間違いなのか。

 練習でフォームを固めても、ブルペンで手応えのあるボールを投げられても、試合になると、余計な力が入ってしまう。

 それは、彼が斎藤佑樹だからだ。

 良きにつけ悪しきにつけ、彼はマウンドに登るたびに注目され、結果が報じられる。二軍戦で大量失点したことがトップニュースになるピッチャーは、斎藤くらいのものだろう。一軍で先発のマウンドに立つときは当然だが、斎藤に関しては、二軍で先発するときも、一軍で中継ぎを務めるときも、いちいち、ここで結果を出さなければ、と周りが彼を崖っぷちに追い詰める。そんなシチュエーションのもと、マウンドで余計な力を抜いて、平常心で投げろと言っても、それは酷な話だ。最近の斎藤は、いつもそんな精神状態でマウンドに上がってきた。運の助けを借りてもいいから、一つ勝ち、二つ勝つことができれば、"余計な力"は自然と抜けていくはずなのに――。

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