広島の名スカウトが惚れ込んだ男・
加藤拓也は「ポスト黒田」となれるか (4ページ目)
そして試合後は、再び渋谷駅に向かって歩いて引き返す。その日の投球の反省点を洗い出すとともに、疲労回復のための有酸素運動も兼ねていたという。
「試合が終わって、アイシングをして、取材を受けて、歩いて帰る頃には誰もいなくなっています(笑)。もともとひとりで何かをするのは好きですし、苦ではないですね。練習もひとりでやることが多いです。気を遣わずに、自分のしたいことができますから」
周囲に流されることはない。自分がいま、すべきことをする。それが加藤の生き方なのかもしれない。DeNAから1位指名を受けた左腕・濱口遥大(神奈川大)は、加藤についてこんなエピソードを教えてくれた。
「去年、大学日本代表で加藤と同室になったんですけど、夜になって加藤が急にいなくなって、どこに行ったのかな? と思ったら、汗だくで部屋に戻ってきたんです。ホテル内にあるジムで筋トレをしていたらしくて、『今日は追い込んできたわ......』って。コイツのストイックさはすごいとショックを受けました」
マウンドに立てば、投手はいつもひとり。孤独を感じながら、チームの命運をかけて1球1球を投げ込まなければならない。加藤の日常からは、そんな投手の"覚悟"を感じることができる。苑田スカウトが評価したのは、この部分だろう。
一方で不安視されているのが、加藤の制球面だ。今秋、加藤はリーグ戦で63イニングを投げて32個の四死球を出している。ボールの勢いがある反面、ストライクとボールがはっきりして、制球がアバウトになる試合も多い。
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