プロ野球トライアウト外伝。「イップス地獄」から這い上がった男たち (5ページ目)
「トライアウトを受けるまでの1カ月間、ずっとスローイングをメインとして練習してきました。僕のなかでスローイングは気持ちの問題が大きかったので、まず技術以前に考え方とかそういうところから直していこうと取り組みました。そうすれば自信もついて変わってくるのかなと」
長兄の史規さんが毎日練習に付き合ってくれ、ノックを打ってくれた。またほかにも協力者がおり、貴規の送球を捕ってくれた。「周りの方々のおかげで、満足のいく練習ができました」と貴規は感謝を口にする。
気持ちの問題が大きいと考えつつ、技術的にも改善を試みた。
「投げるときに、できるだけ顔の近くに腕を通すということを意識してやったり、ブルペンに入ってピッチングしてみたり。1カ月間で工夫しながらやってきました」
そして迎えたトライアウト当日。次兄の由規(ヤクルト)から、「LINE」でメッセージが届いたという。
「長文だったので全部は覚えてないんですけど(笑)。いいところを見せてやろうとか、しっかり投げようとか、アピールしなくちゃとか、そういうのは捨てて、気負わずに今までやってきたことを出して頑張ってこい。そんな内容でした」
貴規にとっての勝負は、シート打撃の前にシートノック。ぎこちなさはまだ残っていたが、捕ってから投げるまでのスピードが速くなり、無難にこなしていた。少なくとも1年前のように、悪い形で目立つようなことはなかった。
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