ドラフト「強行指名」はなぜ起きるのか。履正社・山口のケースを追う

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 今年のドラフトから変更されたことが1つあった。それは1位指名が重複した際に行なわれる抽選のクジだ。昨年まではすべてのクジにドラフト会議のロゴマークがあり、当たりクジには「交渉権確定」と印字されていた。だが、昨年のドラフトでヤクルトの真中満監督が当たりと勘違いしたように"わかりづらい"ため、今年から外れクジは文字もロゴもない白紙になった。

 そんなことが、ドラフトが終わってしばらく経ったこの時期にふと頭に浮かんだのは、日本ハムが6位で指名した山口裕次郎(履正社)をめぐる騒動が起きているからだ。「入団拒否」「強行指名」── 不穏な空気を連想させる言葉も並び、世間の関心も高まっているようだ。

ドラフト直後、ヤクルトから1位指名を受けた寺島成輝(右)とともに笑顔を見せていた山口裕次郎だったが......ドラフト直後、ヤクルトから1位指名を受けた寺島成輝(右)とともに笑顔を見せていた山口裕次郎だったが...... そもそもドラフトとは、指名した選手の入団を確定するものではなく、当たりクジにもあるように指名した球団が選手との交渉権を得るための場である。

 11月4日、大阪府豊中市にある履正社高校を日本ハムの木田優夫GM補佐、大渕隆スカウトディレクター、芝草宇宙(ひろし)スカウトが訪ね、指名の挨拶を行なった。ドラフト翌日にも日本ハム側は学校を訪れたが、このときは山口も岡田龍生監督も同席しなかった。だが、この日はともに同席し、あらためて指名に至った経緯などの説明を受けた。

 この5日前の10月30日。紀三井寺球場(和歌山)で来春のセンバツ大会出場の選考となる近畿大会が行なわれており、その日の第2試合で履正社が勝利。ベスト4進出を決め、センバツ出場に大きく近づいた直後のことだ。インタビュールームではホッとした表情を浮かべて試合を振り返っていた岡田監督が、いざ球場の外に出ると一転、神妙な顔つきで口にしていたのは山口の一件だった。

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