ドラフト「強行指名」はなぜ起きるのか。履正社・山口のケースを追う (6ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 近年の日本ハムは、「巨人以外は行かない」と宣言していた長野久義や菅野智之を指名した経験がある。さらに、メジャー行きを表明していた大谷翔平を敢然と1位指名し、翻意させた実績もある。

 今回の山口の指名も、賛否両論起こることは承知しながら、「入団したなら育ててみせる」「この騒動など、活躍させて忘れさせる」といった、球団の自信や気概が伝わってくる。他球団のスカウトの声には批判的な言葉もあったが、その一方で日本ハムの姿勢に対して羨望の眼差しで見ている人もいた。

 4日の話し合いの後、山口はあらためて社会人行きの気持ちが変わっていないことを記者の前で語ったという。ただ、次回以降予定されている話し合いのなかで、状況が変わることがあったとしても、なんら不思議ではない。

 冒頭でも書いたが、ドラフトとは交渉権を確定させるものであり、指名を受けたからといって入団しなければいけないというものではない。山口の希望も理解できるし、その意思を翻意させたいという日本ハムの意欲もわかる。

 かつて、スカウトをやっていた人から聞いた言葉を思い出した。

「みんなに平等のドラフトなんてありません。そんなことをスカウトが考えていたら、いい選手なんて獲れません」

 この先、山口がどんな決断を下したとしても、日本ハムも山口も責められるものではない。交渉の先に結果がある── それがドラフトだ。そこをあらためて認識しながら、これからの交渉の行方を見守りたい。

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