計算ずくめの逆転V。「指揮官の予言」で
振り返る日本ハムの4年間 (2ページ目)
「このトレードにはいろんな意味合いがあったと思うけど、ライトが空いたということに関しては、考えなくちゃならないことがひとつある。それだけは間違いないよ(笑)」(2013年春)
考えなくちゃいけないこと――それはプロ1年目の大谷にライトを守らせて、一軍のバッターとして起用する、ということだった。
「あれだけの力がある選手の場合は、ファームでやっていても野球がつまらなくなってしまう危険性がある。だから、ね(笑)」(2013年春)
実際、ルーキーの大谷は、開幕戦で"8番・ライト"としてスタメンに名を連ねた。さっそく2本のヒットを放って打点を挙げ、お立ち台にまで立っている。思えば大谷の二刀流は、ここから始まっていたのである。
そしてさらに驚くべきは、糸井と交換でバファローズから入団してきた大引啓次についての、栗山監督のこんな言葉だ。
「もちろん普通に考えれば、リーダーとしても選手としても安定感のある20代後半の大引は、チームにとって得難い宝物。でも僕だけは、みんなが思っていることを思ってない。僕は、いずれ中島卓也をショートに据えたいと考えている。だから大引の加入は、タクが成長するためのものすごく大きな要因になると期待しているんだよ」(2013年春)
栗山監督が当時、連呼していた「タク」はその頃、56という背番号がやけに大きく感じられる線の細い選手だった。ドラフト5位で入団し、プロ5年目の22歳。その前年、主に代走や守備要員として一軍で100を超える試合には出たものの、プロで打ったヒットはまだたったの8本だ。そういう選手を、大引を獲得した直後から将来のレギュラーとして見据えていたというのだから、恐れ入る。
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