サブローからマリーンズへの伝言「Have Funの精神を忘れずに」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 22年間の現役生活のなかで、サブローが一番の思い出として挙げたのは、日本一に輝いた2005年シーズン、ヤフオクドーム(当時)で行なわれたソフトバンクとのプレーオフ第5戦だった。勝ったチームがリーグ優勝となり、日本シリーズに進む大一番。1対2とビハインドのまま迎えた8回表にドラマが起きた。

 この年限りで引退を決めていた初芝清が内野安打で出塁すると、福浦和也もヒットで続く。無死一、二塁の大チャンスで打席に入ったのは、4番・サブローだった。いまになってサブロー本人が「あの場面は力むでしょう」と苦笑するように、馬原孝浩の速球に差し込まれ、セカンドフライに倒れてしまう。

 チャンスでの4番打者の凡退。しかし、ベンチに下がったサブローの胸中には4番の責務を果たせなかった悔恨はなく、チームメイトを信じる思いしかなかった。

「ホームランがポンポン出るような打線ではなかったし、つないでいくしかない。僕一人が打たなくても、他の選手が打ってくれると信じていましたから」

 この言葉に象徴されるように、サブローは当時「つなぎの4番」と呼ばれていた。そして、続く里崎智也がレフトフェンスを直撃する2点タイムリーを放ち、ロッテは逆転。そのリードを守り切って、31年ぶりのリーグ優勝を手にした。サブローにとって「Have fun」の精神は、確固たる自分のスタイルになっていった。

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