2016.07.15

都立高から初の球宴。ヤクルト秋吉亮はタフな「でんでん太鼓」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 秋吉亮という投手は、一度見たら忘れられない投げ方をしている。

 軸足を深く折り、両腕を大きく広げるテークバックまでは、ごく普 通のサイドスロー。だが、ここからグラブを持った左腕が奇妙な動きをする。一般的な投手ならば、グラブを自分の胸に巻き込むように持っていくところを、秋 吉はグラブサイドの腕を一塁側へどんどん開いていく。一部メディアから「でんでん太鼓投法」と名づけられたように、体幹部を太鼓、両腕を玉のついた紐に見 立てて、まるで、でんでん太鼓を振っているかのような投球フォームなのだ。

昨年は12球団最多となる74試合に登板した秋吉亮 秋吉は「高校2年でサイドスローになってから、左腕はずっとこの使い方です」とこともなげに語る。だが、教えたがりの指導者がいれば、なんとも指 導意欲をそそられるフォームに違いない。事実、秋吉はこれまでの野球人生で何度も「開きが早い」と指摘されたことがあるそうだ。

 それでも、秋吉がこの左腕の使い方を直すことはなかった。

「高校時代は、監督から『そのほうが腕はしなるから、直さなくていい』と言われました。大学や社会人ではフォームは自分に任されていましたし、プロでもそうです」

  そしてプロ3年目の今夏、秋吉は初めてオールスター戦に監督推薦で選出される。秋吉は都立足立新田高校出身。はるか昔に草野球から入団した土橋正幸(都立 日本橋高)の例はあるが、ドラフト制導入後、都立高出身の選手がオールスター戦に出場するのは初めてのことだ。無名な「でんでん太鼓」が、球界を代表する リリーフにのし上がっていった背景には、どんな要因があったのだろうか。