今江敏晃「楽天に行ってもロッテのガムは噛み続けます」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 その17日後、楽天球団が今江と契約合意に達したことを発表した。契約の決め手になったのは金銭ではなかった。

「立花(陽三)球団社長からは『絶対に必要な戦力』と言っていただいて、星野(仙一)さんからは『ぜひ来てほしい』と。それは自分が一番欲していた言葉でした。野球選手として必要とされるということは、本当にうれしいことですから」

 移籍を決断する経緯について多くを語らない今江だが、裏を返せば「一番欲していた言葉」をロッテからはもらえなかったということなのだろう。そのことを聞くと、今江は苦笑を浮かべて「ご想像にお任せします」と言葉を濁した。

 FA権を行使するか否か、悩みを深める前の10月26日、今江はある会合に出席している。それは2005年のロッテ日本一にかかわった者たちによる「同窓会」だったという。当時監督を務めたボビー・バレンタイン氏も来日し、多くのV戦士たちが旧交を温めた。また、10月26日は10年前にロッテが日本一に輝いた日でもあった。

「なんだか落ち着きましたね(笑)。僕は一番年下と言ってもいいくらいなので、当時は何も考えずに、失うものはない......ぐらいの感じでやっていたので。それを先輩方がサポートしてくれて、すごく頼もしかったし、居心地がよかったです」

 2005年は今江が初めて年間通してレギュラーに定着した年でもある。不振に悩んでいるときはバレンタイン監督がすっと現れ、「お前はいい選手なんだから、自信を持ってやれ。それ以上に言うことはないんだ」と声を掛けてくれた。

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