米国式から日本式へ。黒田博樹が格闘している「幅」の正体 (3ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 左右の幅に限界があるのであれば、上下の幅で目先を変えるということか。6月30日の巨人戦は、まさにそのスプリットが効果を発揮した。試合こそ、9回にサヨナラ負けを喫したが、8回まで立岡宗一郎、亀井善行、阿部慎之助、高橋由伸が並んだ左打者に対して、安打は立岡の1本だけ。試合後、本人は無言を貫いたが、畝龍実投手コーチは「今日はスプリットが低めに決まっていた。球自体は問題ない」と、黒田の新たなピッチングスタイルに手応えを感じていた。

 全盛期のような打者を圧倒する球威や球速があるわけではない。しかし、不惑を迎えた右腕には8年前にはなかった経験と技がある。また、野村祐輔にカーブの投げ方を聞いたり、前田健太に打者の特徴を聞いたりと、探究心や向上心はまったく薄れていない。その気持ちがある限り、黒田のピッチングの幅はさらに広がりを見せるに違いない。

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