米国式から日本式へ。黒田博樹が格闘している「幅」の正体
7月28日、右肩と右足首の炎症から復帰した黒田博樹(広島)がヤクルト戦に先発し、2回以降、毎回安打を浴びながらも、7回1失点の粘りの投球を見せて、46日ぶりの白星を飾った。続く8月4日の阪神戦でも、勝敗こそつかなかったが、6回を自責点3に抑えて先発投手の役目を果たした。そんな黒田だが、8年ぶりに復帰した日本球界で新たな戦いの真っ只中にいる。
ここまで(8月6日現在)7勝をマークし、防御率2.69と安定した成績を残している黒田博樹
黒田が8年ぶりの日本で苦戦している理由は、"幅"の違いにある。7年間プレイした米国式から日本式に移行する作業は、簡単なことではなかった。
日本と米国ではストライクゾーンが異なり、米国はボール1個分ほど外角が広い。また、米国では手足の長い打者が多く、ホームベースに近づいて立つ選手は少ない。そのため、打者と内角のストライクゾーンの間にあるスペースを、黒田は効果的に使ってきた。黒田の代名詞となった「フロントドア」「バックドア」がまさにそれだ。
しかし、米国よりボール1個分ほど内角に広い日本のストライクゾーンでは、そのスペースが狭く、苦しい投球を強いられる大きな要因となっている。さらに、日本は内角のボールに対して対応力の高い選手が多く、実際、黒田も「いろんな選手と対戦して、日本の打者のレベルの高さを肌で感じている」と語っているほど。
とはいえ、日本球界に復帰した当初、黒田は米国仕込みの投球で打者を抑えてきた。実戦初登板となった3月8日のヤクルトとのオープン戦では、4回1/3を完全に抑える圧巻の投球を披露。そして復帰後、初の公式戦となった3月29日のヤクルト戦でも7回を5安打無失点に抑える好投で、2740日ぶりに日本球界で勝利を挙げた。
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