セカンドの概念を覆すヤクルト山田哲人の圧倒的攻撃力 (3ページ目)
ある時、練習で汗を流す山田を見ていて、ふと思ったことがある。現在、山田は高卒5年目の23歳。そこで23歳のシーズンに圧倒的な成績を残した選手は誰がいたのかを調べていたら、その偉大な顔ぶれに驚いてしまった。
王貞治(巨人)/打率.305、40本塁打、106打点
秋山幸二(西武)/打率.262、43本塁打、94打点、38盗塁
清原和博(西武)/打率.307、37本塁打、94打点
イチロー(オリックス)/打率.356、16本塁打、80打点、49盗塁
松井秀喜(巨人)/打率.298、37本塁打、99打点
山田がこの調子でシーズンを終えれば、この偉大な5人の選手に見劣りしない数字を残すことになるだろう。杉村コーチも山田の成長に目を細める。
「この5人に比べて体力的に落ちるけど、数字を見れば、偉大な選手たちの足もとにはいるのかな。これから体が大きくなった時が楽しみだよね。今年、ホームラン王になってしまったら……現時点ではヒットの延長がホームランのような打者なんだけど、この先、どういう方向性でいくのか。本当にどんな選手になるのか楽しみだよね。でも、5人の名前を見ているとそれぞれタイプが違う。それに山田も“○○二世”とか呼ばれる選手じゃなく、もう山田哲人というカテゴリーの選手なんだよね」
さて、日本において二塁手の概念とはどんなものだろうか。大まかに言えば、小回りがきいて、スケールの大きさは他のポジションよりもやや劣ってしまうといったところだろうか。過去にメジャーでは、カル・リプケン(※)が登場し、「華麗で俊敏性のある」というショートの概念を覆(くつがえ)した。そのリプケンに憧れたデレク・ジーター(※)、アレックス・ロドリゲス(※)、ノマー・ガルシアパーラ(※)といった選手がショートを目指し、メジャーは“大型ショート”の時代となった。
※カル・リプケン…オリオールズに在籍し、メジャー屈指の大型遊撃手として82年5月30日から98年9月20日まで2632試合連続出場の大記録を達成。83年、91年にはア・リーグのMVPを獲得した。
※デレク・ジーター…95年のメジャーデビューから14年に引退するまで、ヤンキース一筋でプレイ。新人王、シルバースラッガー賞5回など、数々のタイトルを獲得した。
※アレックス・ロドリゲス…94年にマリナーズでメジャーデビューし、その後、レンジャーズ、ヤンキースでプレイ。ア・リーグMVP3回、首位打者1回、本塁王5回、打点王2回など、メジャー史に残る成績を残したが、昨年は禁止薬物の使用により全試合出場停止の処分を受けた。
※ノマー・ガルシアパーラ…レッドソックス時代の99年、00年に2年連続首位打者を獲得。04年のシーズン途中にカブスに移籍し、その後、ドジャース、アスレチックでプレイ。09年に現役を引退した。
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