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熾烈なパ・リーグ首位打者争いにみる「打率.350の世界」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 現在、広島で打撃コーチを務めている新井宏昌コーチに、ハイレベルで首位打者を争う選手の心境について聞いてみた。

―― これだけ高い打率を残しても2位なのか、と思ったことはなかったですか?

「それはなかったです。自分も打てているわけだから。加藤秀司さんと争ったのですが、途中、打率.351ぐらいでトップに立ったこともあったんです。結局、首位打者は逃しましたが、それは加藤さんが『僕以上に打った』という結果ですからね。僕としては、首位打者争いをすることや、高打率を維持することのプレッシャーに負けず、打率.358まで上げられたことは、自信になりました」

―― 3割5分以上というのは見える景色が違うものですか。

「3割5分以上の打者は、1日にヒットを2本打たないと打率が下がる世界です。3打数1安打では維持できない。僕は現役の頃、中西太さんに『一日一善』ということを教えられたんですね。1日1回、何かいい行ないをすれば、打者として精神的なストレスはたまらないと。でも、3割5分以上を維持するには『一日二善』じゃないとダメなんですよ(笑)」

 新井コーチは今の若い選手たちに「3打数1安打で打率が下がるような経験をしてごらん」と言うことがあるという。

「ヒットを打たなければならないという状況で、相手も警戒を強めてくる。それに余計な意識を持ちすぎては自分の打撃ができなくなってしまう。その中で1日2本のヒットをうちましょうと。そうした経験をして結果を残せたら、大きな自信になるはずです。僕は2番を打つことが多く、送りバントも多くしました。バントをすれば勝負は3打席しかない。そこで3打数1安打だと打率は下がる。逆に、状態が悪い時は『バントしとこうか』と弱気になってこともあります。数字だけで考えれば、3割5分以上を維持するにはそういう世界でやっていかないといけないんですよ」

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