【根本陸夫伝】王貞治を「ラーメン屋のせがれ」と言い放った男 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

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「すべてを見てはいませんが、王監督にとっては大変な、タフな時間が流れたことは事実です。それに対して根本さんは、王監督を呼んだ以上は、いかなる状況になっても優勝するまで任せるべく、いろいろな面でバックアップしておられた。批判、反発する者に対してはすべて受けて立つ、背負い切る。当然ながら、それだけの度量を持っておられた。チームにとっても、ファンにとっても、非常に心強い人だったのは言うまでもありません」

 そんな中、出番がなくなっていた森脇は96年限りで現役を引退した。

「引退会見の後、『10分ほど話があるから、ちょっと来い』と呼ばれて根本さんの部屋に行くと、実際には3時間も話が続きました。その中で非常に印象に残ったのが、このひと言です。『今日、この話が終わったら、パソコンを買って帰れ』と。まったく予測していない言葉で驚きましたね」

 現在のように、パソコンもインターネットも普及していない頃。ダイエーの二軍育成担当コーチ就任が決まっていた森脇は、自分がパソコンを持つ意味を考えてみた。

 今後は、やる側からやらせる側、サポートする側になる。そのためには今まで以上に見聞を広げ、様々な角度から自分を見つめることが大事になる。ならば、パソコンを使って仕事をはかどらせて、より人に役立つ人間にならなきゃいけない。

「きっと根本さんはそう伝えたかったんだろうな、と受け取りました。ただ、もうひとつ『これからはパソコンでモノが買える時代になるからな』と言われたんです。この言葉は僕には受け取りようがなかった。今では当たり前のことですけど、当時は想像もできませんでした。イマジネーション能力が人と違うのか、そうした将来的な情報を手に入れられるほどのネットワークを持っておられたのか。そこは定かではありませんが、とにかく『モノが違う』という方でした」

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