巨人番が明かす。瀕死のチームを蘇らせた「あのゲーム」

  • 増田和史(日刊ゲンダイ)●文 text by Masuda Kazufumi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

番記者が見た2014年、我がチームのターニングポイント

 V逸のにおいがした。

 5月18日、東京ドームでの交流戦前最後の試合で、巨人は首位を走っていた広島に3-10。ゲーム差は4.5に広がった。「恥ずかしい。胸が痛い」と惨敗を嘆いた原辰徳監督は今季、144試合で113通りもの打順を組んだ。毎日のようにコロコロ変わる猫の目打線に、ナインは辟易していた。この頃、球団関係者がこうつぶやいている。

144試合で113通りの打線を組んだ巨人・原辰徳監督144試合で113通りの打線を組んだ巨人・原辰徳監督

「優勝できなかった2010、2011年に雰囲気が似ている気がする。今年はみんなどこかシラケているというか、チームに一体感がない」

 一方の広島はこの3連戦で勝ち越しに成功。3試合で12打数6安打と大暴れした2番打者の菊池涼介は、こう言って意気揚々と引き揚げた。

「去年まで東京ドームで巨人と1勝1敗だったら、3戦目はだいたい力負けしていた。それが今日、敵地で勝てたことで、今年は巨人と戦える気がします」

 無安打が続いていた広島の主砲ブラッド・エルドレッドにも3試合で3本塁打を浴びた。原監督は各球団の主力に痛打されていたことを問題視。交流戦初戦の同20日、カンフル剤を打ってきた。

 シーズン中では異例の「コーチの配置転換」だった。吉原孝介バッテリーコーチがブルペン担当へ。村田真一打撃コーチがバッテリーコーチの役割を兼任するというもの。原監督は「チームが勝つために配置を変えたということ」と説明したが、事実上のバッテリーコーチ"更迭"だった。主将で正捕手の阿部慎之助が「バッテリーが何とかしないといけない」と神妙な面持ちで話せば、他の主力選手は声を潜めてこう言った。

「打たれたからバッテリーコーチが配置転換というのはよく分からない。だったら投手コーチもやばいんじゃないか」

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